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<半兵衛のひとりごと 01>
「曖昧性~中間領域」

「曖昧性~中間領域」

「日本の四季を楽しむ家」というテーマに関する記述の中で、私は日本固有の空間構成の特徴である「曖昧性」について取り上げました。これは伝統的な日本建築だけに当てはまるものではなく、私たちの今後の家づくりのヒントになるものだと考えています。アトリエ木粋舎の標準的な施工事例を思い浮かべながら、和空間の良さをもっと身近に感じていただければ幸いです。

リビング~テラス、キッチン~テラス、キッチン~リビング、それぞれの関係が曖昧で、目的に応じて一体的にも、分離しても使えるようになっています。テラスは外部でありながら、木格子によって緩やかに囲まれ、内部のような安心感が得られます。この内と外との中間領域が日本固有の空間構成を象徴しています。

これは、都市部と山間部の中間にある里山と似ています。適度に人の手が加えられ、管理された緩衝帯。人と野生動物の住み分けをしながら共有・共存を可能にします。緩衝帯がないと、ちょっとした環境の変化で、ショッピングモールに熊が…となります。家も気密性ばかりにこだわり過ぎると、内と外を明確に分断する里山不在の家になってしまいそうです。

中間領域は、家族のコミュニケーションの場であるだけでなく、近隣とのコミュニティ形成の場でもあります。程よい距離感がちょうど良いのです。隣に誰が住んでいるか分からない現代の住宅事情では、近隣トラブルが多くなって当然です。本能的に、知っている人は仲間、知らない人は敵なのですから。昭和の家では、郵便配達のおじさんが縁側に腰かけて、一人暮らしのおばあちゃんと一服なんて光景がありました。今は独居老人が亡くなっても誰も気付きません。

生産効率だけで判断すると一見無駄だと思われがちなものも、「ものさし」が変われば有益なものになるのです。断熱性能という「ものさし」だけに頼ると、知らず知らずのうちに大事なものを「排除」してしまうことにもなりかねません。あなたのその「ものさし」はどこで手に入れましたか?誰かが営利目的で無料配布していたものではありませんか?